Cloverdale の「Channel 303」は、完全 DIY かつハードウェアをメインにして制作されたコンセプト・アルバム兼ライブ・プロジェクトです。
このプロジェクトは、アナログ・シンセやドラム・マシン、リアクティブ・ビジュアルを軸に、テクノ、ブレイクス、ドラムンベース、ハウスといったジャンルをひとつのクリエイティブなビジョンのもとで融合しています。各トラックは単体でも強いインパクトを持ちながら、アルバム全体としても一貫したストーリーを感じられるように設計されています。
そのサウンドを形作る上で、T-RackS は重要な役割を果たしました。生のハードウェア信号をコントロールするためのクリッパーやリミッター、トーンと一体感を生み出すためのサチュレーションやバス処理まで、Cloverdale は T-RackS の各モジュールを活用し、パンチとバランス、そしてキャラクターを兼ね備えたサウンドを構築しています。
今回は「100k Watts」のサウンド・メイクから、 アルバム全体をひとつのプロジェクト内でミックス/マスタリングする手法まで、「Channel 303」における T-RackS の使用法について、Cloverdale 本人に詳細をインタビューしています。
この記事のトピック
- ハードウェア中心のワークフローにおける T-RackS の役割
- 「100k Watts」でのシンセとドラム・マシンのバランス調整
- 複数ジャンルにまたがるアルバムに、統一感を持たせる方法
- クリエイティブ・ツールとして、そして仕上げのツールとしての T-RackS
- ビジョンを保ったまま行うマスタリング
- ハードウェア志向のプロデューサーにとって T-RackS が重要な理由
Cloverdale が、「Channel 303」をどのように T-RackS で形作っていったのか。ハードウェア信号のクリッピングから、 プロジェクト全体を“グルー”する工程までを解説していきます。

「Channel 303」は多くのハードウェアを取り入れていますが、それらをまとめ上げる上で、T-RackS はどんな役割を果たしていますか?
ハードウェアで制作していると、どうしても入力レベルがバラつくことがあります。なので僕が最初にやることのひとつは、すべてのハードウェア・チャンネルにクリッパーとリミッターを挿すことですね

アナログ機材を、Classic Clipper と組み合わせたときのサウンドが本当に気に入っています。特に Model:Cycles に使ったときの相性は抜群ですね。飛び出してしまいがちなトランジェントをしっかりクリップしてくれるので、マスターのリミッターが効く前に、攻めたドライブができるのが重要なポイントです。

次に、音に色付けするという面では Quad Saturator の柔軟性とキャラクターがとても気に入っています。個々のサウンドだけでなく、バスにもよく使っていました。
これによって、デジタルとアナログが混在するさまざまなサウンド同士に、共通した音の質感を与えることができたのです。
T-RackSには、明確な個性を持ったモジュールが数多く揃っています。それらをバスやサウンド・グループに使うことで、音同士を自然にまとめ上げ、統一感のあるサウンド・キャラクターにしてくれるのです
「100k Watts」のような楽曲では、荒々しいシンセやドラムマシンを、どのようにフェス仕様のサウンドへまとめたのでしょうか?

「100k Watts」は、ドラム、ベース・ライン、スタブ、ボーカルという、構成自体はとてもシンプルな曲です。ただ、アルバムの1曲目ということもあり、とにかく強いパンチ感が必要でした。そこで、T-RackSを使って、全体をしっかりと馴染ませたのです

Pultec スタイルの EQ は高域が耳に痛くならず、音を整えるのに最適でしたし、Quad Comp や Saturator X のようなマルチバンド系ツールは、ミッドをしっかり残しながら、低域のパンチを作るのに役立ちました。また、この曲で最も活躍したのは Bass ONE ですね。ハウスやテクノのプロデューサーにとって、キックとベースの関係性を追い込む上で、まさに救世主のようなモジュールです。
フェスの大型サウンド・システムでもキックはしっかりと感じられつつ、トップエンドが耳に痛くない、その絶妙なバランスを T-RackS で実現できました。

テクノからドラムンベースまで、ジャンルが幅広いプロジェクトですが、アルバム全体の統一感を保つうえで、T-RackS はどれほど重要でしたか?
アルバム全体は、ひとつの巨大なプロジェクト・ファイルの中でミックスしました。それによって、全曲を俯瞰した視点を常に保つことができたのです。
各曲が「同じ作品の一部」と感じられるように、ミックスを整える役割を果たしてくれたのがT-RackSです
すべてのチャンネルで同じクリッパー、EQ、サチュレーション系ツールを使うことで、音色のトーンに一貫性を持たせつつ、ジャンルごとの振り切り方はしっかり追い込むことができました。そのおかげで、テクノの楽曲からドラムンベースのトラックへ切り替わっても、アルバム全体の空気感が分断さるようなことがなかったのです。
T-RackS は制作の過程で使用していますか?それとも仕上げにのみ使用するツールだと考えていますか?

自分はネットで学んできた独学の人間だからかもしれませんが、制作において「クリエイティブな工程」と「仕上げの工程」の境界線は、あまりはっきりしていません。
アプローチやテクニック自体はまったく違うこともありますが、曲を書いている段階から、各要素をできるだけ完成形に近づけるようにしています。ひとつの要素がきちんと磨き上げられて、ミックスとしても「完成している」と感じられるまでは、次に進みません。新しい要素を追加すれば、当然ほかの部分を調整し直すこともあります。それでも、すべてが理想的に収まるまでは先に進まない。もし、どうしても思ったようにハマらない音があれば、それは潔く捨てて、もっとフィットするものに置き換えます。

T-RackS は、「あと一歩で完成」という状態なのに、どこか少しデジタルで暖かみが足りないと感じたときに、必ず試すツールです。LA2A、Neve、Pultec のエミュレーションは、フレッシュで温かみのあるキャラクターを与えてくれますし、マルチバンドの Quad Saturator は、さらに色気と質感、そしてエッジの効いたニュアンスを加えてくれます。
自分でマスタリングすることは、Channel 303 のエネルギーをビジョン通りに保つ上で、どのように役立っていますか?
制作プロセスと同じように、マスタリングも最初の段階から始めています。T-RackS のツールを組み合わせながら、自分で仕上げていくことで、楽曲の核となるハードウェア由来の生々しいパンチ感をそのまま保つことができました。
一般的なマスタリング・エンジニアよりも、さらにラウドで、よりダーティな仕上がりになることもあります。でも、それこそが狙いなのです。Channel 303 は、サチュレートされた、生命感に溢れたサウンドであるべき作品です。自分でマスタリングを手がけることで、最終的にどれだけのカオス感を残すのか、あるいは洗練されたサウンドにするのか、そのバランスをすべて自分で決めることができるのです。
ハードウェア中心のワークフローにおいて、なぜ T-RackS が重要なのでしょうか。一言でまとめると?

アナログ・ハードウェアを使うなら、その処理にもアナログらしく鳴るツールを使いたいですよね。T-RackS は、アナログ・モデリングの EQ、クリッパー、コンプレッサー、マスタリング・ツールなどを備えた、私にとっての定番バンドルです。どんな場面でも、過度にデジタル臭くならず、常に生命感のあるサウンドを保ってくれる、信頼できる存在です。
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T-RackS 6 MAX では、62種類のミックス&マスタリング・モジュールがアンロック可能。スタンドアロンの T-RackS Mastering Console および DAW プラグインとしてご利用いただけます。あらゆる楽器、ジャンルをカバーする大量のプリセットも収録されているので、ヒット曲のノウハウをもとにして、短時間にミックス、マスターを仕上げることができます。
コンプレッサー、EQ、チャンネル・ストリップから、IK Multimedia ならではのアナログ・モデリング・テクノロジーを使ったホール、ルーム、プレート、スプリング・リバーブ、最先端のデジタル・モジュール、オーガニックなオールインワン・プラグインまで、T-RackS 6 は、ミックス、マスターを仕上げるのに必要なツールをまとめて提供します。

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